フラワーアレンジメントの心理学

臨床心理士が心理学を用いてフラワーアレンジメント作品を提案していくブログ

香りの心理学的効果

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前回までは,フラワーアレンジメントの心理的効果として,生花を使ってアレンジメントを作った時とアーティフィシャルフラワーを使ってカゴバッグを作った時の両方に共通すると考えられたことについて書きました。今回は生花を使ったフラワーアレンジメントとアーティフィシャルフラワーを使ったフラワーアレンジメントの違いについて書きたいと思います。


 生花を用いた時とアーティフィシャルフラワーを用いた時とで最も違いを感じたのは,お花の香りがあるかないかでした。お花の香りは嗅覚を通じて脳に送られます。感覚器官を通じて入ってくる外からの情報は通常,大脳に送られ,過去の経験によって処理されることになるのですが,この過程を通じて人はそれが何か,自分にとってどんな意味をもつのかなどを判断します。このように対象物がいかに把握されているかを科学的に研究するのは「知覚心理学」と呼ばれる心理学です。


嗅覚というのは生物にとって非常に大切なものです。例えば,生物は生命維持に必要な食べ物を見つけるために,また赤ちゃんがお母さんを認識するために,においを利用します。また食べ物の好き嫌いの一因にもにおいが影響しますが,その好き嫌いの判断には「感性」が働きます。心理学で「感性」は,「五感や身体感覚を通して得られた情報への直感的な印象,感情評価や断能力のこと」と定義されています。つまり,嗅覚を通してなにかのにおいを嗅ぐと感性が働き,そのにおいに対して好き嫌い,懐かしい感じ,あるいはホッとするなどの感情を経験することになります。そのため,生花を使ってアレンジメントする時は香りという刺激があることで働く感性があり,アーティフィシャルフラワーを使った時には感じられない感情を得られる可能性が考えられます。においや香りには好き嫌いがあると思いますので,自身の感性が「なんだか好き」や「安心する」と判断するお花,つまり自分にとって良い心理的効果が感じられるものを知っておくと役立つかもしれません。また,もし自分が好きだと思っていた香りをあまり心地よいと思えない時には,それをこころが知らせているなにかのサインとして受け止めることもできるかもしれません。  


このように,生花を使うアレンジメントでは,いわばアロマテラピーの効果も同時に得ることができるという面でアーティフィシャルワラワーと違うと考えられました。余談ですが,この一連の比較を実験的(科学的)に行うには同じお花の種類で同じ形態の作品を作らなければいけません。この辺りについてはまた追々書きたいと思います。