フラワーアレンジメントの心理学

臨床心理士が心理学を用いてフラワーアレンジメント作品を提案していくブログ

フラワーアレンジメントとカタルシス

フラワーアレンジメントとカタルシス

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 生花を使ったアレンジメントとアーティフィシャルフラワーを使ったカゴバッグ,これら二つを作る過程で経験した共通のこととして,前回は「マインドフルネス」を挙げました。今回も共通点について書きたいと思います。
 
それぞれを作り上げた時に共通していた感情,それは「すっきりした」という心が軽くなったような気持ちです。この「すっきりした」という気持ちになれた理由が,心理学でいうなら「カタルシス」の効果によるものと考えられます。
 
「カタルシス」とは言葉や行動を通じて,心の中にある欲求や葛藤などの感情を解放するということです。「カタルシス」は,フランスの精神科医 ブロイラーが,患者さんに感情を打ち明けさせることでその人の症状が良くなったことをきっかけに,心理療法の中で使われるようになりました。例えば身近な例でいうと,日常生活でなにかもやもやした気持ちがある時,家族や友人にああでこうでと話しているうちになんだか少しすっきりする感じ,これも「カタルシス」の一種といえます。「言葉や行動を通じて」と前述したように,「カタルシス」の効果は,話すだけでなく,例えば俳句をよむ,歌を唄う,陶芸をする,また絵を描くなどの行動によっても得ることができます。心理療法の中に芸術療法と呼ばれるものがあり,この中には俳句療法,詩歌療法,描画療法音楽療法をはじめ箱庭療法やコラージュ療法など,いわば表現活動を用いて行われるさまざまな療法があります。これらの療法は,表現するというプロセスの中で「カタルシス」効果を得る以外にも,創造することやできあがった創造物を見ることによって自分の内面にあった感情に気づけたり,また自己治癒が促される可能性があることを基に実践されている技法です。
 
フラワーアレンジメントについても似たようなことがいえそうです。お花を使って何かを作るというのは表現活動であり,お花の色を選んだり,配置を考えたり,またできあがった作品を鑑賞することで,上述のような効果が得られると考えられます。
 
 人が作った作品にはその人の気持ちが映し出されると言われています。心理学ではこれを「投影」と言います。そして,個人が描いた絵などの作品からその人の心情や状態を推察し,カウンセリングの指針を立てる手がかりとして用いることもあります。カーネーションスターチスを使ったアレンジメント,またラナンキュラスアジサイを使ったカゴバッグ,私の作品には何があらわれているのでしょうか,ゆっくり眺めて内なる気持ちに気づきたいと思います。